目次

1.メタボロームとは1

メタボローム (metabolome) とは、メタボリズム (metabolism) とすべて (総体) -omeから作られる造語で生体内に存在する代謝物すべてを指します。 代謝物とは生体内の細胞で物質生産やエネルギー生成等で発生する物理化学反応 (代謝) によって生成や消費される物質の総称です。メタボロームの対象範囲としては、分子量が約50~1000の糖・有機酸・核酸・脂質などを対象とします。具体的なもので表すと、排便がこれに当てはまります。

2.メタボローム解析とは2

メタボローム解析とは、上節で記載した代謝物を解析する事です。同じような生体内に存在する物を解析する方法として、ゲノム解析やトランスクリプトーム解析、プロテオーム解析等があります。メタボローム解析含め、これらの解析を総称してオミクス解析と呼ばれています。

また、メタボローム解析は、他の生体内解析と比較して、解析する生物を問わないということです。他の解析方法は、解析する際に解析する生物種によって使用するライブラリが異なります。しかし、メタボローム解析は代謝物を解析するため生物種に係わらず解析できます。例えばアミノ酸の場合は「アミノ酸」で共通しているため、生物種によっての違いを考慮する必要はありません。

3. メタボローム解析の意義3

メタボローム解析で測定する代謝物は、もともと食事などで摂取された物が生体内で代謝されて作られたものになります。この代謝物は物質そのものが生理的な活性を持つこと以外に、生体内でさらに代謝され以前とは異なる代謝物になるということもあります。そのため、代謝物が代謝されることにより、細胞内のみではなく脳や筋肉さらには尿や脳脊髄液といった体液等にまで影響を与えます。生物はこの代謝の機能を使い、生体内の状況が変化したとしても、代謝を繰り返し生体の恒常性 (ホメオスタシス) を維持しています。ゆえに、温度や湿度、光等の環境変化や薬物摂取、飲食などの外部刺激や病気などによって生体内の状態が変化すると、発生する代謝も変化し、生成される代謝物の種類や濃度も変化します。よって代謝物を解析するメタボローム解析を用いることで、生体内でどのような変化が起こっているかを理解することができ、生命現象をより深く把握することが出来るかもしれません。さらに、代謝物の変化によって生体内でどのように代謝がされているかといった仮説・検証もできるかもしれません。

4.メタボローム解析の流れ4

メタボローム解析の流れとしては、「解析目的の明確化」、「実験デザインの作成」、「最終代謝物の発見」、「最終代謝物の同定」、「仮説・検証」の流れで解析を行います。

4.1. 解析目的の明確化

これはメタボローム解析以外の解析でも最初にくると思います。なぜこの解析を行うのか、この解析で何を知りたいのか等、解析する目的を明確化させる必要があります。これが明確化されていないと、調べたいもの以外も解析してしまい、時間と費用が多くかかってしまいます。そのため、「解析目的の明確化」をしっかりと決めることが重要になると思います。

4.2. 実験デザインの決定

次に実験デザインを決定します。メタボローム解析は代謝物を用いる為、いろいろな方向から解析できます。そのため、解析目的に沿った実験デザインを決定させ、解析を行うことが必要になると思います。例えば、培養細胞や血液、尿や糞便などどのような代謝物を用いるのか、また介入の効果を検証するのか、観察研究で変化検証等の目的に応じて実験デザインを決定させていきます。

4.3. 分析

実験デザインが決定したら、実際に代謝物を分析していきます。代謝物を探索するやり方は「ターゲット分析」と「ノンターゲット分析」の大まかに2種類あります。ターゲット分析は、分析する成分を絞り、代謝物中の多成分から特定の成分を分析する方法です。ノンターゲット分析とは反対にターゲットの成分を決めずに、代謝物の成分を網羅的に分析する方法で、これらはどちらもメリット・デメリットも存在するので、分析する場合は考える必要があります。

4.4. 仮説・検証

最後に仮説・検証です。分析したデータを基に仮説を立て検証していきます。これには、分析したデータのみでは行うことはできません。これまでに行ってきたデータや情報を抽出するソフトウェアなど様々なものが必要になります。そのため、過去の文献等を確認する必要があると思います。

5.解析方法5

分析方法については、得られた抽出物に応じて代謝物解析を行う。この章では分析方法を4つ紹介します

5.1. MS (質量分析法)5、6

まず初めにMS (質量分析法) を紹介します。物質は分子や原子、イオンから生成されます。MSは物質をそれぞれに合ったイオン化法でイオン化して、その質量数と数を測定する分析方法です。この分析方法の特徴は少ない物質で多くの情報を入手できる点です。

5.2. GC-MS (ガスクロマトグラフィー質量分析法) 5、7

GC-MS (ガスクロマトグラフィー質量分析法) はGC (ガスクロマトグラフィー) とMSを合わせた分析法で、主にガスクロマトグラフィーで分離した成分をMSで分析するといった方法です。GCを簡単に説明すると、分離したい物質をキャリヤーガスと一緒に固定相の液相の中を通ることによって、溶解と気化を繰り返し物質を分離させるといった方法です。

5.3. LC-MS (高速液体クロマトグラフィー質量分析法) 5、8

LC-MS (高速液体クロマトグラフィー質量分析法) はLC (高速液体クロマトグラフィー) とMSを合わせた分析方法です。LCを簡単に説明すると、分離したい物質を液体と一緒に流し、固定相を通します。固定相と相互作用が強い物質は固定相内をゆっくり進み、相互作用が弱い物質は固定相内を早く進みます。この進む速度を利用して分離するといった方法です。

5.4. CE-MS (キャピラリー電気泳動質量分析計) 5、9

CE-MS (キャピラリー電気泳動質量分析計)はCE (キャピラリー電気泳動) とMSを合わせた分析方法です。CEを簡単に説明すると、分離したい成分に高電圧をかけ、イオン化させます。イオン化させるとイオン半径に基づき永動し、分離させる方法です。

6.まとめ

メタボローム解析は日々進化しています。既存測定で使用する測定機器の精度の向上や分析方法の拡張、過去実験で得られた結果の解析など、様々な要因で進化しています。また、この技術を利用し、現在ではメタボローム解析等のオミクス解析を用いた食品の安全性検証なども行われており、ゆくゆくは医療の発展もしていくと思います。これからのメタボローム解析敷いてはオミクス解析の発展に期待です。

7.オルトメディコのニュートリゲノミクスサービス

オルトメディコでは早稲田大学 人間科学学術院 原太一 教授のご協力のもと、メタボローム解析を含め、様々な解析サービスをご提供しています。ニュートリゲノミクスサービスでは、食品素材を特定の細胞に添加したときの変化を解析し、食品素材の機能性を検討します。食品素材をご提供いただくだけで、素材の前処理や条件検討から、データの分析と解釈まですべてサポートいたします。

8.脚注

オルトメディコでは早稲田大学 人間科学学術院 原太一 教授のご協力のもと、メタボローム解析を含め、様々な解析サービスをご提供しています。ニュートリゲノミクスサービスでは、食品素材を特定の細胞に添加したときの変化を解析し、食品素材の機能性を検討します。食品素材をご提供いただくだけで、素材の前処理や条件検討から、データの分析と解釈まですべてサポートいたします。