目次

1.ゲノムとは1

ゲノム (genome) とは、gene (遺伝子) とome (集合を表す語尾) を組み合わせた言葉で、生物の遺伝子情報全体を指す言葉として使用されています。いわば人を構成するための設計図のようなものです。この設計図を読み解くことが出来れば、生命のさまざまなことを解明できるというわけです。ゲノムは主に、DNAで構成されているものとして扱われています。

2.DNAとは2, 3

DNA (デオキシリボ核酸) とは、4種類 (A:アデニン) (T:チミン) (G:グアニン) (C:シトシン)の塩基が並んでいるものを指します。またDNAは基本的に2本で1本になっており、お互いに補完しあう形になっています。構造上、4種類の塩基がとても長い配列を作っており、解読することがとても困難になっています。

3.ゲノム解析とは3, 4

ゲノム解析とは、ゲノムを構成しているDNAを解析する事です。人間を例に挙げると、人間のゲノムには個人差がほとんどありません。しかし、塩基配列のたった1つの塩基が違うだけで人間の特徴が大きく変わってしまいます。この違いを解明することが人間の体を知るうえでとても重要になってきます。人間を例に挙げましたが、人間だけではなく、動物や植物など生態系の原理やメカニズムを把握するためにもゲノム解析はとても重要です。次章で2023年現在のゲノム解析の流れを記載します。

4. ゲノム解析の流れ5, 6

ゲノム解析で重要になってくるのは、塩基配列の決定になります。この章では、3つの観点で記載いたします。

4.1. ゲノムDNAの抽出及び複製

まず初めに、ゲノムDNAを抽出します。抽出する際、生物の細胞から糖やたんぱく質、脂質など余分なものを取り除いて抽出します。抽出したゲノムDNAは塩基配列を解析しようとするには大きすぎるため、制限酵素と呼ばれる酵素を使用したり、水圧といった物理的な方法を用いたりして、解析できる大きさに切断します。切断後、大腸菌などの細胞中で自己増殖できるDNA (ベクター) と切断したDNAをリカーゼというくっつける酵素を使用し、結合させます。結合後、結合させたDNAを細胞中で自己増殖させています (クローン化) 。この増殖させたDNAは、ゲノムの断片をランダムに含んでいます (ショットガンクローン)。

4.2. 複製したDNAの塩基配列の解読

次に複製したゲノムDNAの塩基配列を考えていきます。まず初めにDNAポリメラーゼという新しいDNAを作成する酵素を用いて、元のDNAを複製させます。複製させるとき、調整したヌクレオチドを用いて、DNAの鎖を伸ばす物とDNAの鎖をこれ以上伸ばさず、発光する蛍光物質付けた物に複製します。この複製作業を繰り返していきます。そうすると、1塩基ずつ長さが異なるDNAの鎖が作成されます。こうしてできた鎖をシーケンサーと呼ばれる機械のキャピラリで電気泳動 (プラスとマイナスの電極を用いて、DNAの分子を泳がせる) させます。DNAは負の電荷を持っているため、DNA鎖はプラス極の方に動いていきますが、それぞれ動く速度が違います。短いDNA鎖ほど速度は速く、長いDNA鎖ほど速度は遅いです。この速度の違いを利用し塩基配列を決定していきます。キャピラリにレーザーを当て、そこを通るDNA鎖の発光時間 (鎖の長さ) と蛍光波長 (塩基種類) を検出します。
このようにして、塩基配列を解読します。

4.3. 解読した塩基配列の機能推定

最後に、解読した塩基配列の機能を推定していきます。 まず初めにアッセンブルという操作をしていきます。キャピラリから検出した塩基配列データは数百~千程度の長さの断片データです。またこのデータはショットガンクローンを基にするため、その配列の多くは重複しています。そのためアッセンブルという操作は、重複部分を持つ大量のデータを、もともとのゲノムDNAの塩基配列にコンピュータを利用して再構成する操作のことです。キャピラリからの検出で不確実な部分があった場合は、再度シーケンシングを行う、アッセンブルしたゲノムデータを大量に複製して検証するなど、アッセンブルの正確性をさまざまな方法で確認します。確認したら、遺伝子領域の推定を行っていきます。
塩基配列の中で、タンパク質として機能していると考えられる範囲を推定遺伝子領域 (Open Reading Frame:ORF)と呼びます。このORFは、始まりと終わりが決まっており、3塩基から始まり、3塩基で終わります。このORFの領域が「データベースに存在する配列との類似性が高いため、機能も類似している」というホモロジー検索や「機能的に重要な配列ほど塩基配列が変化しにくい」というモチーフ検索などによって機能を推定していきます。

5. マルチオミクス解析への転用7

現在、このゲノム解析が多くの所に転用されています。その一例としてマルチオミクス解析というものがあります。これは、ゲノム解析を含めた、DNAからたんぱく質までの遺伝子発現をそれぞれの過程で解析し、様々な視点から解明しようという解析方法です。さらに、その下流の代謝産物を軸として考えることによって、体内でどのような反応をするのか、今まで見えていなかった視点で物事を考えることができ、新たな発見が見込めます。また、今までは、ゲノム解析を含めたオミクス解析で扱っている大量のデータを解析することが出来ませんでしたが、ビックデータ処理の発達に伴い、複数のオミクス解析を掛け合わせて解析する事ができるようになり、食品や人体など多くのが解明できるのではないかと注目されています。

6. オルトメディコのニュートリゲノミクスサービス

オルトメディコでは早稲田大学 人間科学学術院 原太一 教授のご協力のもと、マルチオミクス解析を含め、様々な解析サービスをご提供しています。ニュートリゲノミクスサービスでは、食品素材を特定の細胞に添加したときの変化を解析し、食品素材の機能性を検討します。食品素材をご提供いただくだけで、素材の前処理や条件検討から、データの分析と解釈まですべてサポートいたします。

ニュートリゲノミクスサービス

7. 脚注