目次

1.従来までの有効性・安全性評価1

これまで、医薬品や化粧品、食品の有効性や安全性を検証するために、多くの動物実験が行われてきました。

引用:医薬品開発の流れ|医薬品製造の基礎知識

新薬開発を例とすると、人で試験をする前に非臨床試験段階で動物を用いて、有効性・安全性を検証します。この流れは、今までの医薬品開発において「当たり前」になっています。化粧品や食品に関しても、医薬品開発の流れに準じて開発を行っている関係で、動物実験は医薬品や化粧品、食品の開発においても必要とされてきました。

2.動物愛護団体から動物試験NGの要請2

研究開発には欠かせないものとなった動物実験ですが、PETA (アメリカの動物保護団体) などをはじめとする動物愛護団体が「動物実験反対」の働きかけを行っています。2009年、EUで化粧品の動物実験を禁止にしています。この章では、禁止になるまでの流れを見ていきます。

ヨーロッパで化粧品の動物実験反対運動が大きくなったのは1980年代です。ここでのロビイング活動で1993年に「動物実験が行われた原料を配合する化粧品のEU内での販売を1998年1月1日以降禁止する」といった指令が出されました。しかし、容易に動物実験を廃止することが出来ず、禁止執行日の調整がなされていきました。けれども、動物保護団体が協力し、化粧品メーカーに訴えかけ続けました。この粘り強い活動が実り、2003年に「2009年3月11日に動物実験、動物実験を行った原料を使用した化粧品の販売の両方が禁止とする」指令がEUで発令されました。化粧品の安全性を検証する動物実験 (反復投与毒性、生殖毒性、毒物動態) は発令から3年間は例外として認められてきましたが、それも2013年3月11日に全面的に禁止になりました。

3.日本の大手企業が廃止し始めている3, 4, 5, 6, 7

動物実験廃止の動きは海外だけではありません。日本の企業でも動物実験を廃止もしくは必要性がない限り行わないことを公言しています。

・資生堂

2013年4月から開発に着手する化粧品・医薬部外品における動物実験を廃止しました。
※社会に対して安全性の説明する必要が生じた場合は動物実験を行う可能性があります。

・アサヒグループ

2021年12月末までに食品・飲料、化粧品、日用品分野の動物実験を全廃する方針
また、動物実験の代替法の開発と普及に人材と財源の投資を強化する
※市販後の事故等、公衆衛生上の説明責任が生じた場合や諸外国の制度上法的要件とされている場合は、例外的に動物実験を行う可能性があります。

・キユーピー株式会社

2018年7月にPETA (アメリカの動物保護団体) から要請があり、要請から半年で「動物実験を実施しない」「動物実験を外部委託しない」「動物実験に資金提供しない」という決断をしました。
※法規制上求められる場合や行政からの要請を受けた場合、動物試験の実施を検討する

・日清食品グループ

2018年7月までに自社、外部委託それぞれ動物試験を廃止

・不二製油

PETAからの要請を受け、2018年9月より動物実験の実施、動物実験への資金提供、動物実験の外部委託をトータルで廃止しました。
※国/行政機関からの要請や法規制等により動物実験を求められ、かつ代替試験法がない場合を除きます

これらの企業以外にも多くの企業が必要のない動物実験廃止の動きが活発になっています。しかし、米国などのように、動物試験のデータが必要になるため、多くの企業は但し書きで記載しています。
また、日本の新素材の機能性表示の届出に関しては、動物実験を必須にしていないため日本で食品を扱う場合は動物試験が必要ありません。

4.動物を使用しない有効性・安全性試験の代替試験例8

・三次元人工表皮モデル

皮膚試験の代替法として、人の皮膚の細胞を三次元で培養した人工皮膚モデルを使用し、毒性を検証する方法。

・NRU法

生きている細胞のライソゾームに取り込まれるという原理を利用した眼刺激性試験や急性毒性試験などの代替法として、96個の穴のあいたプレートに培養細胞を入れ、量を変えた試験物質を注入し一定時間後に、ニュートラルレッドという試薬を注入し、生き残った細胞数を測定し試験物質の毒性を調べる方法。

また、代替法発展のために、日本動物実験代替法学会が株式会社マンダムと協力し、動物実験代替法開発研究助成活動を行っています。

5. オミクス解析が代替案になるのか9, 10

オミクス解析とは、生体内の細胞のDNAおよびDNAの代謝物を使用して、生態内分子を網羅的に解析する解析方法です。この解析方法は人だけでなく食品などでも行われており、食品の新しい有効性の発見や安全性検証に転用もされています。またOECD プロジェクトでの成果物を厚生労働行政に反映させるための研究の報告書にも、代替実験としてオミクス解析の可能性が検討されたと記載されています。

6.まとめ

現在、動物愛護の観点から多くの企業で動物実験を控える企業が増えてきており、動物実験の代替法の研究も盛んにおこなわれています。代替法の一つとしてオミクス解析は考えられています。解析技術の向上や、ビックデータの処理向上などにより、オミクス解析が今より実施しやすい解析法になれば、動物実験の代替法として用いられると考えます。オミクス解析のこれからに期待されます。

7.オルトメディコのニュートリゲノミクスサービス

オルトメディコでは早稲田大学 人間科学学術院 原太一 教授のご協力のもと、マルチオミクス解析を含め、様々な解析サービスをご提供しています。ニュートリゲノミクスサービスでは、食品素材を特定の細胞に添加したときの変化を解析し、食品素材の機能性を検討します。食品素材をご提供いただくだけで、素材の前処理や条件検討から、データの分析と解釈まですべてサポートいたします。

7. 脚注